亡Aは、工業用ゴム製品を製造するK社に、昭和38年7月に入社し、16年6か月勤務した。
亡Aは、蒲原工場において、ゴム同士の張り付けを防止するための石綿含有のタルク粉を手掴みで容器から取ってゴム製品にまぶしていたところ、タルク粉の粉じんを身体内に吸引し、平成25年5月31日、びまん性胸膜肥厚を発症し、平成30年7月23日、それが原因で死亡した。
Aは、休業補償請求申請をしたところ、静岡労働基準監督署長は、平成28年6月27日、Aに対し支給決定をした。
その後、Aが死亡し、Aの妻が遺族補償年金の申請をしたところ、静岡労働基準監督署長は、令和2年2月19日、Aの妻に対し、支給決定をした。
その上で、Aの相続人である妻と子供が、令和5年10月10日、静岡地方裁判所に、国を被告とし、損害賠償の訴を提起したところ、国はAのびまん性胸膜肥厚が、K社の業務に起因し、国が工場内に局所排気装置の設置をK社に義務付けなかったことが過失にあたるとして、不法行為責任を認め、訴訟上の和解をし、合計1430万円を支払うことになったものである。
K社は、労災認定に際しても、自社の過失責任を認めていないということであるが、これからK社を相手にして残りの1430万円の損害賠償請求をすることになる。
最近、びまん性胸膜肥厚による死亡について、石綿が原因であることを否定する労働基準監督署の扱いが散見されるが、このような場合も、あきらめることなく、当事務所に相談していただければ幸いである。