会社が倒産や廃業していた場合、アスベスト被害の損害賠償請求はどのようになるのでしょうか。
会社が倒産していたり廃業していますと、会社に損害賠償金の支払い能力がありませんので会社からは何も得ることができないということになります。
但し、国は工場における作業でアスベストの粉じんを身体内に吸引し、中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚、石綿肺等のアスベスト関連疾患に罹患した場合、その被害者や被害者が死亡している場合にはご遺族に対し慰謝料の2分の1の額と10%の弁護士費用を支払うことを表明しています。
これを当サイトの記事にありますように泉南工場型といいまして、訴訟を静岡地方裁判所に提起することによって訴訟上の和解で解決することになっています。
この泉南工場型の損害賠償請求をするには次の要件を充足することが必要になっています。
(1) 昭和33年(1958年)5月26日から昭和46年(1971年)4月28日までの間に局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、アスベスト粉じんにばく露する作業に従事し、上記のアスベスト関連疾患に罹患した者であること
(2) 提訴の時期が損害賠償請求の期間内であること。
アスベスト被害者の就労時期が上記の期間に一部でも該当していれば国に対して損害賠償請求ができます。
労災保険や石綿被害救済法による補償を受けている被害者やご遺族の方々も損害賠償請求ができます。
又石綿工場でアスベスト取扱い作業に従事していた従業員の方々ばかりでなく、石綿工場の作業場に継続的に立ち入り、アスベストを身体内に吸引した運送会社の従業員の方々も損害賠償請求ができます。
さらに断熱材や保温材としてアスベストが使用されていた自動車整備工場、電車車両製造工場、化学繊維工場等でアスベストを身体内に吸引した従業員の方々も損害賠償請求ができます。
上記の要件を充足した方々に対し、国は、2分の1の慰謝料とそれに対する10%の割合の弁護士費用を支払っています。
国が定めた2分の1の慰謝料額は次のとおりです。
(1) じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合 550万円
(2) じん肺管理区分の管理2で合併症(続発性気管支炎等の疾病)がある場合 700万円
(3) じん肺管理区分の管理3で合併症がない場合 800万円
(4) じん肺管理区分の管理3で合併症(続発性気管支炎等の疾病)がある場合 950万円
(5) じん肺管理区分の管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚の場合 1150万円
(6) 石綿肺(じん肺管理区分の管理2,3で合併症なし)による死亡の場合 1200万円
(7) 石綿肺(じん肺管理区分の管理2,3で合併症(続発性気管支炎等の疾病)あり、
又は管理区分4)、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合 1300万円
さらに、建設現場で働き、アスベストを身体内に吸引し、アスベスト関連疾患に罹患した労働者や一人親方、そのご遺族に対しましても厚生労働省に対し給付金の申請をすることによって、国から支給金を得ることができます。
これは建設アスベスト型といわれており、国が定めた支給要件は次のとおりです。
(1) 昭和50年(1975年)10月1日から平成16年(2004年)9月30日までの間に、一
定の屋内作業場で建設業務に従事していた労働者や、一人親方・解体工・中小
事業主(家族従事者等を含む)が対象になります。
吹付作業の場合は昭和47年(1972年)10月1日から昭和50年(1975年)9月30日ま
でとなっています。
(2) その結果、石綿肺、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水といった石綿関連疾病を発症した方
(3) アスベスト関連疾患に罹患した旨の医師の診断日又は石綿肺に係るじん肺
管理区分の決定日(アスベスト関連疾患により死亡したときは、死亡日)から20年
以内に請求すること
国からの給付金(慰謝料)は次のとおりとなっています。
弁護士費用がつかないだけで、給付金の額は泉南工場型と変わりありません。
(1) 石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない者 550万円
(2) 石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある者 700万円
(3) 石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない者 800万円
(4) 石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のある者 950万円
(5) 中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4,良性石綿胸水である者 1150万円
(6) 上記(1)及び(3)により死亡した者 1200万円
(7) 上記(2)、(4)及び(5)により死亡した者 1300万円
又、国の責任が認められる主な建設作業従事者の職種は次のとおりです。
大工、内装工、電工、吹付工、左官工、塗装工、タイル工、配管工、ダクト工、空調整備工、鉄骨工、溶接工、ブロック工、保温工、鳶工、墨出し工、型枠大工、解体工、はつり工、築炉工、エレベーター工、サッシ工、シャッター工、電気保安工、現場監督
以上のとおりですので、会社が倒産していても、廃業していても、会社に請求でき
ないだけで、国に対しては損害賠償請求が最高裁判決によって確定していますの
で、アスベスト事件を多数取り扱い、実績のあります当事務所にお気軽にご相談下
さい。