Aが胸膜中皮腫で死亡したことについて,国から1430万円の慰謝料を得て,静岡地方裁判所で訴訟上の和解(2021年1月26日解決)

 亡A(元石綿取扱い会社従業員,死亡当時72才の男性)は,今から50年前の昭和45年頃,B会社に就職し,B会社が,C会社が製造した石綿パイプの切断の仕事を請け負ったので,B会社内でその作業に従事した。

 そして,B会社は,C会社で使用する機械の製造を行っていたので,石綿粉じんの飛散するC会社にも出入りし,機械の据え付けをしたことがある。

 Aは70才になってから息切れするようになり,病院を受診したが,71才になって胸膜中皮腫との確定診断を受けた。

 その後,間もなくして,Aは死亡したものである。

 亡Aの妻Bは,D労働基準監督署に労災申請をし,遺族補償給付の支給決定を得た。

 その後,労基署から通知が来て,その通知には,工場型アスベスト被害の場合については,国が2600万円の2分の1の1300万円を,裁判を提起する形をとって訴訟上の和解をし,支払うことがあると記載されていた。

 そこでBは,アスベスト被害に詳しい当事務所に相談し,国を被告として,静岡地方裁判所に国家賠償請求の訴を提起した。

 当事務所は,Aの同僚や,当時のAの使用者の妻から,AがB会社で働き,C会社の石綿パイプの切断の作業に従事したこと,さらに,C会社にも出入りし,石綿粉じんをばく露したことの証明を得,その内容の陳述書を作成した。

 そして,AがB会社で石綿パイプの切断をした場所が,会社の工場内であったことを確認し,それを陳述書の中に盛り込んだ。

 このようなことが奏功し,提訴してから3回目の和解期日の開催で,訴訟上の和解が成立した。

 国は,昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの石綿作業に従事した就労歴があれば,Aのようにわずかな期間であっても和解に応じている。

 弁護士費用も10パーセント支払ってくれ,発症時からの遅延損害金も付し,和解金を支払ってくれるので,石綿被害にあっている方,又は石綿被害で亡くなられた方のご遺族は,至急,当事務所までご連絡していただきたい。

 死亡してから20年が経過すると,国は例外なく和解に応じてくれないので,注意が必要である。  建設作業従事者の方であっても,建設現場ばかりでなく,会社の作業場で石綿建材の切断をしていた場合には,泉南工場型労災に該当するので,当事務所に相談をして欲しい。