アスベスト(石綿)被害者に対する私の思い

所長弁護士 大橋昭夫

 

2005年(平成17年)6月の「クボタショック」以後,アスベスト(石綿)被害は多くの方々に知れわたることになり,静岡県内でも多数の被害が発生していることが確認されました。

私は,45年前から,静岡スモン訴訟,遠州じん肺訴訟等の大規模な薬害,労災訴訟を手掛けていたこともあり,早速,アスベスト(石綿)被害を救済するために,有志に呼びかけて「静岡アスベスト被害救済弁護団」を結成しました。

静岡県は,アスベスト(石綿)工場でアスベスト(石綿)製品が製造され,その上,アスベスト(石綿)製品を使用する企業も多く,アスベスト(石綿)被害の多発地帯でした。

私たち弁護団は,今までに多数の損害賠償請求事件を解決してきました。

私たちの事務所や弁護団は,「アスベスト(石綿)被害の救済が第一」という思いから,被害者やご遺族の無念のお気持ちを重く受け止め,その無念の原因となったアスベスト(石綿)被害の根絶の先頭を走り続けてきました。

私たちは,常に被害者側に立つプロフェッショナルな労災弁護士として,悲惨なアスベスト(石綿)被害の実相を明白にし,2度とこのような被害が発生しないよう,さらに被害者に対しましては,適正な被害回復がなされるよう努力してきました。

人々のいのちや健康が守られ,1人1人の人間が大切にされる社会こそ,私たちが最も望む社会です。

私は,何故もっと早く,国がアスベスト(石綿)の使用を禁止しなかったのか,企業はもっと早い時期にアスベスト(石綿)の危険性を知り,予防措置をとらなかったのかと,いつも疑問に感じています。

「普通に死にたかった。」との被害者の無念の叫びや,「残していく妻や子供のことが心配だ。」と私に話し,生に未練を残して亡くなっていったアスベスト(石綿)被害者の悲痛な言葉が脳裏から離れません。

私は,被害者やご遺族と共に泣き,共に喜ぶという姿勢を堅持し,亡くなっていった被害者のお気持ちをいつまでも忘れることなく,これからもアスベスト(石綿)被害根絶と,アスベスト(石綿)被害者救済のために邁進したいと思います。